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島唄が響きわたる [音楽]

 今夜は(といっても実際は7月11日)御茶ノ水にあるカザルス・ホールにて、『大島保克 with ジェフリー・キーザー』と銘打たれたライブに足を運んだ。
 カザルス・ホールというのは、その名が表す通り、チェロ奏者パブロ・カザルスに因んで命名された、室内楽専用のコンサートホール。響の良さには定評がある。

 大島保克氏は石垣島の生まれで、沖縄に伝わる島唄に現代の息吹を吹き込み、蘇らせる活動を主にしている。三紘と力強い歌声はシンプルであるが故に、唯一無比な魅力に溢れている。

 一方、ジェフリー・キーザーは若くしてアート・ブレイキー&ザ・ジャズメッセンジャーズのピアニストに抜擢された才人。当時の彼の演奏は白人青年らしく、躍動感と感覚的な鋭さを兼ね備えていて、老舗メッセンジャーズの音を若返らせる原動力となっていた。ジャズ以外にも造詣が深く、以前から大島にはとても興味を抱いていたらしい。

 19:00始まりを10分程経過した頃、場内の明かりが落ち、ジェフリー、続いて大島が登場。
 オープニングは最新アルバムの1曲目と同じ「流星」。
 大島の三絋が鳴る。島唄特有の土の、いや、この場合、風土の匂いをたっぷり含んだ音がホールに流れる。少し遅れてジェフリーのピアノが、まるで寄り添うように優しく入ってくる。その瞬間、島唄は島唄を超え、無限に拡散していく。
 東洋と西洋の幸福な邂逅・・・そんな言葉さえも無意味に思えるような、至福の一瞬がここにある。
 その場の空気がガラッと様変わりしたのを、観客の一人一人が確かに感じ取ったに違いない。

 前半はほぼアルバム順に進む。
 休憩を挟んで、後半はゲストのバイオリン(&マンドリン)奏者も加わって、前半とはまた異なった音世界が展開された。

 一曲演奏し、語りが入り、また一曲。けして上手い話し方ではないものの、その人柄を偲ばせる朴訥さが、大島という人間の魅力を表している。一方、ジェフリーは以外にも日本語で挨拶! 途中から英語に戻るも、大受け。こんなところからも彼の島唄大好き、日本大好きという気持ちがうかがえる。いつまで経っても好青年なのだった。

 演奏の途中、お互いの音にしっかりと耳を傾けている様子が見て取れる。さらにちらちらと振りかえったりして。そんな様子が見ているこちらとしては微笑ましくもあり、音楽っていいなあ~と、素直に思えてくる。でも、音楽って本来そういうものだったんじゃないだろうか?

 100年後、たとえ今宵訪れた観客が誰一人この世にいなくなったとしても、きっと今日聴いた歌(唄)の数々は、それまでとまったく同じように存在しているのだろう。
 『言葉』も『民族』も『思想』も『宗教』も異なる<名も知らぬ誰か>が、偶然これらの歌を聴いたなら、しばし会話を中断し、身体を休め、流れて来る旋律に静かに耳を傾けるに違いない。

 そこには生きている人がいる。
 溢れんばかりの感情がある。
 命の息吹がある。
 感謝の言葉がある。

 歌って素晴らしい。


 




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