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ムンク展 [アート]

 ムンクといえば、ああ、あれね! と、誰もが答えられるほど、人々に知られた画家であります。それもこれも代表的傑作《叫び》の衝撃度の大きさによるものでしょう。あの観る者を不安に陥(おとしい)れる作品の負のベクトルは並々ならぬものがあります。
 TAOも《叫び》の登場人物よろしく、両手を耳にあてて、大きく口を開けるギャグをやった記憶があり。漫画などでも度々そんなカットが登場したりするほど、ムンクの存在はポピュラーです。

 しかし、それでは《叫び》以外の作品については、はたしてどれくらい知られているのでしょうか? なんとなく絵柄は浮かんでくるものの、タイトルまでは分からない、まあ、たいがいの方はそんなところではないかと思われます。

 過去に大規模なムンク展が公開されたという記憶がTAOにはないので、07年10月6日~08年1月6日まで、上野の国立西洋美術館で開催されている展覧会に、この機会を利用して足を運んでみました。さて、《叫び》のようにインパクトのある作品に出会えるのでしょうか?

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 建物入口横の看板からしてなにやら不穏な雰囲気。入場する前から《不安》な気持ちを掻き立てられます・・・と、思ったら、なんとこの絵のタイトルが《不安》でした! はまり過ぎと言おうか、何と言おうか・・・。のっけから侮り難し!

 さて、ざっと会場を回り、ムンクの絵の数々を眺めて気になった事がいくつかあるので、それについて少しばかり書いてみましょう。

 ①風景にやたらと海が多い
 ムンクの生まれた国はノルウエー。なので、海はごく身近な風景だったのだろう(地理の授業でフィヨルドと習ったのが懐かしい)。それゆえに"海岸にたたずむ女たち" といったシチュエーションの絵が事の他多い。
 最初に例に挙げた《叫び》、上の写真の《不安》、そして《絶望》と名付けられた3作品は、どれも同じ場所を描いた3部作と考えてよく、その背景にも岸辺と船が描かれている。

 ②風景にやたらと木が多い
 とにかく木なのである。それも必ずと言っていいほど、画面を縦に分割するように描かれているのだ。時にその木が男女を分けたりするのに用いられ、なかなか二人を一緒にはさせてくれない。どうやらムンクにおける木の存在は、人と人との断絶に一役買っているように思われる。

 ③複数の人物が存在する場合、不幸そうな人物がたいていそこにいる
 画面左隅にムンクにしては明るい表情の女、真ん中に男女、左隅に孤独な女、という構図が複数見受けられる。何故かたいがい右隅なのである。女の内面にある多重性とかなんとか、そんな説明がされていました。それらの絵を観ると、ムンクって女性恐怖症の気があったと思われるのだが、さて、いかがなものでしょうか?

 ④画風が変わらない
 ピカソなどは時代と共にどんどんその画風を変えていったが、ムンクは最初から最後まで、ほとんど画風が変わらない。逆に言えば、最初から "あの絵" なのだ。これはある意味不思議な事で、普通は成長に合わせて変化していくのが当り前なのに、なんででしょうか?

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 今回のムンク展の主題は、複数の作品を個々で鑑賞するのではなく、一連に流れの中で観ていくという観点からの展示方法でした。
 実際にムンクは、建物の壁一面に、装飾としての自分の絵画を色々なパターンで並べて、その見え方を探ったそうです。ちなみに先に挙げた《叫び》《不安》《絶望》の3部作は、それで一つの固まりを形成していました。ただ、面白い事に、その3作品の上に、《宙空での出会い》というタイトルの絵を飾っていた事です。
 この絵は例えるならシャガール風な構図を持っていて、光物体を中心に、左右に男女が裸で空(?)に浮いているように描かれています。下の3部作が色調からして暗く沈みがちなのに対して、正反対な雰囲気のこの絵を上の位置に持ってきた意味というのも、しっかりと考える必要がありそうです。

 予想以上にサクサクと観られたムンク展。
 この冬、けっこうおすすめです。

 


タグ:絵画
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コメント 8

紫式子

『宙空での出会い』には
考えさせられるところが
大きかったですね。

TBさせていただきます。
by 紫式子 (2007-10-25 18:49) 

TAO

初めまして、紫式子さん。
確かに《中空の出会い》の飾られている位置が上記3部作の上にあるというのが意味深ですね。
なぜかでベートーベンの「苦悩を付き抜け、歓喜へ!」っていうのを思い浮べてしまいました。
ただ、展覧会最後の労働者を描くシリーズははっきり言って、ムンクらしくないなあ・・・とも思ったりして。やっぱり "日常と非日常の境目" から覗くなんとも不可思議な情景に惹かれます。
by TAO (2007-10-27 14:13) 

サンフランシスコ人

はじめまして。カリフォルニア州からこんにちは。

《ムンクって女性恐怖症の気があったと思われるのだが、さて、いかがなものでしょうか?》

ムンクの家族の女たちがどんどん病死したらしいです。
by サンフランシスコ人 (2007-11-18 12:51) 

TAO

サンフランシスコ人さん、初めまして。
L.Aには二度ほど行きましたが、カリフォルニアまで足を伸ばした事はありません。歌にもあるように、青い空、行ってみてー!

ムンクは妹が亡くなったのは知っていましたが、調べてみたら母親も弟も亡くなってるんですね。恐ろしい!
まだ幼い時期にそんな経験したら、そりゃ誰だって普通じゃいられなくなりますとも!
by TAO (2007-11-18 22:13) 

サンフランシスコ人

ムンクはノイローゼになったらしいです。
by サンフランシスコ人 (2007-12-02 04:48) 

TAO

死への恐怖が、逆に死を直視せざるを得ない状態にムンクを向かわせたのでしょうか? 彼のほとんどの絵からは、《死への恐怖》と《生への不安》が伺えますよね。
《マザ・コン》が成人すると《女嫌い》という図式も同様かもしれません。
by TAO (2007-12-02 16:36) 

サンフランシスコ人

《死への恐怖が、逆に死を直視せざるを得ない状態にムンクを向かわせたのでしょうか?》

罪悪感を感じてしまったらしいです。 
by サンフランシスコ人 (2007-12-03 05:13) 

TAO

自分の周りの愛する人間が死んでしまい、自分だけが生きているその罪悪感なのかなあ。
確かにとても辛い体験ですものね(泣)
by TAO (2007-12-04 22:07) 

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