刑事コロンボ第19話『別れのワイン』 [刑事コロンボ]
『別れのワイン』(ANY OLD PORT IN A STORM)
いよいよ真打登場!
いよっ、成駒屋!!!
失礼、これは歌舞伎でしたね。
さて、いよいよシリーズ屈指の名品と相成りますが、かれこれ20年? も昔にテレビで観た感動が、果たして蘇るのでしょうか? 期待と同時にちょっぴり不安でもあります。
STORY = カッシーニ・ワイナリーは、良質のワインを世に送り出してきた名門として、ワイン通を唸らせてきた。経営者のエイドリアンは、ワイン一筋、25年に渡りこのワイナリーに尽くし、その功績が認められ、ワイン協会から "今年の人" に選ばれたほど。
そこへ会社のオーナーである腹違いの弟リックが現れ、安値ワイン専門のマリノ・ブラザーズにカッシーニ・ワイナリーを売却することに決めたと告げる。
よりによって、あんなところに! 激昂したエイドリアンは、とっさにリックの頭を殴ってしまう。昏睡状態のリックの手足を縛り、ワイン貯蔵庫へ置き去りにし、競売の為、秘書のカレン共々ニューヨークへ旅立つのだが・・・。
観終わってひと安心。
やっぱり最高傑作の名に恥じない逸品だった。
まず殺人を犯したエイドリアンのキャラクターが丁寧に描かれているので、「犯人=悪者」の図式ではなく、単に遊ぶ金欲しさに父親から譲られたワイナリーを売却しようとしたリックの方が「悪者」なのだと、自然に思わせる。
そりゃあ、手塩に掛けて育ててきたワイナリーを金銭目的であっさり売却するなんて、ワイン好きにはたまらんぞ! ついワイン好きなワタクシゆえ、エイドリアンに一票投じたくなる。あんたは悪くない!
☆
せっかくなのでワインに関するお話を。
◆エイドリアンは調査に訪れたコロンボの目の前で、ワインをデカンタに移し変える。
「今が10時半で、ちょうど1時に昼食をとるので、それまでワインを空気に触れさせるのです」
ワインと味の関係は、まず温度。そして空気に触れさせること。良く "花開く" と形容される。味は時間と共に刻々と変わってゆく。でも、最適な状態にさせるのに、2時間半もかかるかは疑問。
◆劇中、エイドリアンの口から、何種類かのぶどうの品種が飛び出す。
ガメイ=主にボージョレー・ヌーヴォー用に用いられる。一般的にはそれほど評価の高いぶどうではない。
ジンファンデル=アメリカで栽培されるぶどう。酸味より渋みが強い。
カベルネ・ソ-ヴィニオン=赤ワインに使われる代表的なぶどう。さくらんぼのような果実味あり。
◆エイドリアンは、殴って昏睡状態に陥った弟エンリコの手足を縛り、ワイン貯蔵庫に放置する。その時、空調装置をOFFにして、そのまま一週間のニューヨーク旅行(ワイン・オークションに出席する為)に出掛けてしまう。
でも、ワイン・コレクターなら絶対に空調を切るなんてことはしないはず。ヴィンテージ・ワインの保護には、温度管理が何よりも重要だからだ。
☆
コロンボからすれば、エイドリアンの犯罪にはつじつまが合わぬことが多々ある。
・弟のエンリコとは不仲なのは周知の事実にもかかわらず、エイドリアンが、「ワイナリーの継続は彼の意志でもある」などと、言ったこと。
・ダイビングで崖から飛び降りて、後頭部を痛打して死亡。なれど、胃袋はからっぽだったこと。コロンボの調査で、エンリコが大食漢であったことが後で判明。
・崖の上に残されたオープン・カーに、雨の汚れがまったくないこと。
状況証拠はエイドリアンが犯人であると告げている。にもかかわらず、決定的な証拠がない。
そこでコロンボはお得意の逆トリkックを仕掛けることにした。
犯人扱いして悪かったと、高級レストランにエイドリアンを誘い、一緒にディナーを食べ、食後にエイドリアンがニューヨークで競り落とした高価なヴィンテージ・ワインと同じ物をオーダーする暴挙。そんな物があるはずがないとのよそうに反して、運ばれてきたワインに目を輝かすエイドリアン。それがコロンボの逆トリックだとも知らずに・・・。
しかし、ひと口飲んだ彼の顔が曇る・・・。
なぜなら・・・。
☆
天候という人間の意志ではどうにもならぬ厄介な代物に敗れ去ったエイドリアン。
ワイン貯蔵庫の空調を切ったばっかりに、40度という突然の気温にワインは耐えられず、すべて泥水となってしまった。ダメになってしまったワインを海に捨てるエイドリアンの心情を思うと、胸が痛む。
ワインにすべてを捧げ、最後にすべてを失った男。
その時、そっとコロンボから差し出された最後のワイン。
万感の想いで口にするその味は、いかほどのものであったのだろうか・・・。
ついに観ちゃったんですね☆『最高傑作』!
でも、私も思いました。。
「なんであんなにワインを愛する男が空調を切っちゃった?
他の方法はなかったの?」
あの時、そういえば客がいて、動転もしてたし、急いでたからか・・?
まあ、エイドリアンのオタクぶりや上品なキャラクターに救われ、
最後の逆トリックの為のそのような設定も
あまり気にならないのはアッパレですが。
秘書役のジュリー・ハリスも良かったですよね☆
『エデンの東』の頃は老けた顔だな。。と思ってたけど、
返って中年になってこういう役を演じたら「情念」みたいな怖さも
あの善人顔から垣間見れて。。いい!!
見応えある素晴らしい作品ですね。上質のワインみたいに。
by みん姐 (2008-07-31 08:53)
いいものはいい。
これはその典型。
細かく見れば突っ込みどころもあるのだが、重箱のすみをつついてもヤボというものでしょう。
事件を通してまるで戦友のような間柄になったコロンボとエイドリアンの<別れの儀式>を堪能する。それが正しい鑑賞の仕方、大人というものではないでしょうか。
また、メイン・テーマに隠れて表には出てきませんが、おっしゃる通り、12年の間尽くしてきた秘書カレン(ジュリー・ハリス)とエイドリアンの、親密になりそうでならないあのもどかしさ、これも重要な要素でした。
最後に彼女の取った行動も、愛あればこそだったのでしょう。
注)ネタばれ
ここだから書きます。
最後、レストランで出されたヴィンテージ・ワインの味の微妙な違いに気づくエイドリアン。でも、そんな微妙な違いなら、以前に一度同じものを飲んで味を記憶していなければ出来ない芸当。
しかし、彼はこのワインにとんでもない大金を次ぎ込んでオークションでせり落とします。
(同じワイン仲間から試飲させてもらったならともかく)
まあ、これは余談でした。
旅行で2日ばかり留守にします。
次の記事は、映画『ハプニング』(ただいま公開中)の予定。
さて、変態節炸裂といきますでしょうか?
by TAO (2008-07-31 10:20)
おお!!旅行ですかーー!?
大いに楽しんで来てくださいね~♪
気をつけて行ってらっしゃーーーい!(^O^)/
by みん姐 (2008-07-31 14:02)
昨年に引き続き、清里へ行ってまいりました。
ただ残念なことに夏風邪をひいてしまい、余り体調が良くなかったです。
まあ、おいおい(忘れた頃に)UPしましょう。
by TAO (2008-08-02 22:35)