刑事コロンボ第25話『権力の墓穴』 [刑事コロンボ]
『権力の墓穴(FRIENDS IN DEED)』
ジョニー・キャッシュの候好演が光った名作『白鳥の歌』に次いで、なんと今度はコロンボの直属の上司が犯人という異色作『権力の墓穴』の登場!
ある意味掟破りな設定であるわけですが、そんな状況をかいくぐり、コロンボがどう犯人逮捕に漕ぎ着けるのか、興味深々です。
それと同時に "交換殺人" ならぬ、"交換アリバイ作り" というシチュエーションが、推理小説には常套手段ではあるものの、この作品に厚みをもたらすこととなっています。
STORY⇒ロサンゼルス警察次長のマークの道路を隔てた隣に住む友人のヒューが、浮気性の妻ジャニスを殺した。相談を受けたマークは事件の揉み消しに一役買い、殺人の犯人を近頃この界隈を荒らしている宝石泥棒の犯行と断定する。それも自らが証拠隠滅に手を貸し、その上目撃者にまでなって。
なぜ彼がそこまでヒューの肩を持つのかというと、同様の手口の犯行と見せ掛けて、自分の妻マーガレットを殺害し、この偽装工作にヒューを引き入れる為であった。
事件はマークの目論見通り、泥棒の犯行の線で捜査が行われることとなった。しかし、そんなところにコロンボが現れ、事件につじつまが合わない箇所がいくつもあるのを発見してしまい・・・。
今回はコロンボ以上にその上司であるマーク次長の一人舞台的な色合いの強い作風になっている。なにせ犯人と捜査する側を同時にこなしているわけで、まさに八面六臂の活躍なのだ。本当、ごくろうさんと、一声掛けてあげたくなる。
そんな大活躍を、いつも通り現場にぶらりと現れ、部屋を眺めただけで、何かおかしいぞ・・・と、あっさりと感ずいてしまうコロンボの食えないキャラもいつも通りとはいえ、憎たらしい。そんあにあっさりと見破ったら次長の立場がないだろう! とか、現会社員であるTAOなど考えてしまう。
確かに冷静に眺めれば、次長、あんまり頭が切れるようには見受けられず(失礼!)、根回しで出世(嫌な言葉だなあ)した感もなくもなし。まあ、実力と地位はイコールではないのは、コロンボを見れば明らかだけれど。
で、そこに宝石専門の泥棒で刑務所を行ったり来たりしているアーティという人物を絡ませるアイデアがいい。彼はまったく今回の一連の事件には絡んでないのだが、この界隈を荒らしている宝石泥棒を内側から知る立場にあり、宝石泥棒には宝石泥棒ゆえの美学があることを強調する。
そんな彼に犯人逮捕の逆トリックの片棒を担がせるコロンボもずいぶん太っ腹だが、それを引き受ける彼もまた立派だ。一つ間違えれば一連の事件の犯人にされるかもしれないのだから。
このシリーズでの楽しみの一つに、コロンボが犯人に仕掛ける逆トリックがある。今回はいつも以上に大胆かつ大仕掛けなトリックで、犯人の次長同様、こちらも一杯食わされる結果に。このカタルシスがあるからコロンボ・シリーズは止められません!
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