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『いつかの森へ』(海市-工房) [演劇]

 これまでこのブログでも、演劇界唯一の良心とか、書いてきた。
 まず物語ありきの姿勢は、奇抜な設定や舞台装置がよしとされる現代において、見方によっては古典的、もしくは時代遅れにも取られかねない。
 それでも物語を通すことによって初めて語られることもあるだろうが・・・という作者の心持ちは、ずっと変わらないに違いない。

 意味深なタイトル『いつかの森へ』の "森" とは、実際の森ではなく、人の心の奥深くに隠されえいるた暗部の比喩。
 主人公の女性は、過去の呪縛から逃れようと今を必死に生きるも、何気ない瞬間に引き戻されてしまいそうで、いつもビクビクしている。
 一方、男は、その女性とはまた違った捉え方ではあるが、やはり過去の呪縛を抱えている。
 そんな2人が出会う。それもある事件以来、久々に。
 事件を中心に、左右対称とでもいう位置にいる二人の再開は偶然の産物なのか、それとも必然か? その瞬間から錆びついて動かないはずのネジが、静かに廻り始める・・・。

 ただ、いつもと違うのは、男との出会いによって、(表向きは)平凡に暮らしていた主人公の周辺がざわつき始めるのだが、男にだらしない妹との姉妹関係にけっこう比重が置かれ、男の存在感が薄く感じられてしまうことだ。
 会社をクビになった夫婦の、特に奥さんの話や、足の悪い高校生の花の存在が、なんでそういうキャラを与えられているのかがいまひとつ理解出来なかった。そうでなければならない必然性とはなんだったのか? 
 断片でしか語られない過去の物語をこちらがちゃんと把握していないという思いを抱きつつ、どこか中途半端に放り出された感が拭い去れない。

 エンディングはこれまで同様、一縷(いちる)の光を暗示して終わる。
 そこでホッと安堵するものの、途中の展開に、ちょっと納得出来ない自分もいたりしてしまう。
 次作に期待!

タグ:海市-工房
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