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Elliott Murphy's Song [音楽]

 かつては、そう、70年代の後半には、ディランズ・チルドレンの一人として脚光を浴びていたエリオット・マーフィー。
 派手さはないが、良質なアルバムを発表し、都市の暗部を描く気鋭のシンガーとの好評価も、思ったほどのセールスには結びつかず、いつしかアメリカを追われるようにして、パリに活動拠点を移す。
 同様なシンガーにウォーレン・ジヴォンがいるのだが、彼も死ぬまでまっとうなセールスを上げることが出来なかった人だ。作品はどれも素晴らしかったにもかかわらず・・・。

 このように、はるか東の果てにある日本の洋楽ファンからしたら信じられないようなアメリカのユーザーの惨状には、まったくもって失望の念しか持てない。
 かつてアメリカの国民音楽とも言えるジャズがそうだ。バド・パウエルも、デクスター・ゴードンも、ジョニー・グリフィンも、みんな本国では食えずに、ヨーロッパに移ったのだった。

 フランスに渡ってからのマーフィーは、嬉しいことに、コンスタントにアルバムを発表してくれている。
 『NIGHT LIGHTS』 『JUST A STORY FROM AMERICA』といった傑作には残念ながら及ばないものの、駄作はない。
 歌い続けること・・・。
 継続は証明することなのだ。過去の自分の存在証明であり、それは同時に、今現在の存在証明でもあるからだ。
 売れてようがなかろうが、歌そのものの価値をおとしめるものではまったくない。
 誰にでも理解出来るものが必ずしも素晴らしいとは限らないように、仮に売れなくったって素晴らしい歌はたくさんあるのだから。

 10代から20代前半の、ピカソに例えるならば《青の時代》にも似た、青春のうっ屈した思いを代弁してくれた一人がエリオット・マーフィだった。
 明日をも知れぬ我が身に吹く風は冷たい。自分がこれからどうすべきなのか、どこへ向かえば良いのか、まったく見えなかった時、いつも彼の歌は姿の見えない友のように、そっと付き添ってくれていたっけ・・・。

 
 「You never know what you're in for」(『Night Lights』より)

 And we are all junkies, pushers, pimps and hookers
 You never know what you're in for
 And you can shake it, try to forsake it
 You know you're gonna take it
 You never know what you're in for

 俺たちはそろいもそろって、ヤク中や、売人や、ヒモや、売春婦で
 先がどうなるのかなんてまったくわからないし
 そんな運命を振り払うことも、捨てることも出来るんだろうが
 でも、結局はそれを選んじまうのさ
 先がどうなるのかなんてまったくわからないし                      (訳 TAO)

 と、歌われるサビが、妙に自分の境遇とリンクして、心に沁みた。
 負け惜しみなのは重々分かってはいるのだが、ドロップアウトもせず、卒業~就職と、真っ当な道を当たり前のような顔をして生きているヤツに嫌悪感を抱かずにはいれなかった。
 いち社会人として働き、家族を持つようになった今でも、あの時の思いは、心の片隅にいつだって残っている・・・。


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