一瞬の芸術(ブレッソン展) [アート]
ついこの前、若いカップルに記念撮影を頼まれた。
こんな時はこちらも妙に緊張するもので、ちゃんと撮れるか心配になってしまった。冷静に考えれば、デジカメでの撮影なんだから、撮ったその場で結果を確認出来るんですよね(笑)。
良い写真を撮ろうとすればするほど、なぜか例外なく凡庸に撮れてしまうのは、いったい何故なのでしょうか? この点、ボクなどよりもうちの娘の方がよっぽど上手。変に意識しないでパシャパシャ撮りまくるのが吉と出るみたい。
展覧会もほぼ最終日間際、なんとか時間を作って東京国立近代美術館へ行って来た。
目的は『アンリ・カルティエ=ブレッソン 知られざる全貌』展。
九段のお堀の周囲では、この糞暑いのにマラソンランナーよろしく走っている人がたくさんいてビックリ! なにやら競技中のようで、間違っても熱中症で死なないようにね。
ブレッソン(同名で映画監督もいるが)といえば誰でも思い浮べるのが「サン=ラザール駅裏」(1932年)という、水溜まりをジャンプする紳士の姿と、水面に写る人影の写真。多分、0.1秒前でも後でも写真のバランスが壊れてしまう奇跡のタイミングを捉えることに成功した、二度と撮れない一枚。世界を驚愕させた一枚だ。
この作品がブレッソンの作風を見事に象徴している。
いわゆる<一瞬の芸術>というやつだ。
この一瞬の芸術を捉えるため、彼は手持ちのライカを黒く塗ったり、黒のビニールテープを張ったりして、徹底的に目立たないようにしていたという。まさにプロは努力を惜しまない実例であろう。
そして「サン=ラサール駅裏」以外にも、さまざまな一瞬がブレッソンによって切り取られていく。たとえば、
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◆「強制収容所からの開放、ひとりの女性が自分をゲシュタポに密告したものを覚えていた」(1945年) この長いタイトルを持った写真は連続写真となっていて、密告した者とされた者の立場が逆転するところを見事に捉えている。
◆「セビーリャ、スペイン」(1933年)では、内戦で破壊された街の壁で遊ぶ子供たちの姿がある。戦争の悲惨さと、そんな状況でも元気に遊ぶ姿に、平和を願うブレッソンのいちるの望みが伺える。
◆「クワウテモクシン街、メキシコ」(1934年) 厚いドアの窓の部分から顔を出し、多分、外のお客の注意を引き付けようとしているのだろう、娼婦二人の写真。良い悪いではなく、身体を売ることを商売とする娼婦に、生の逞しさを見る。売春は世界最古の職業なのだ。
◆「マルヌ河畔で、フランス」(1938年)は、まるで「水浴の女たち」「海辺の少女たち」といったルノワールの絵画の雰囲気を現代に蘇らせたようで楽しい。川辺で釣りを楽しむ合間に、岸辺の芝生でランチでも。男は当然一杯やってますな(笑)。
◆「カシミール州スリナガル」(1948年) ボロをまとった貧しいヒンズー教徒達(?)の姿に、キリストとその弟子達の姿をオーバーラップさせたのだろう、神々しい写真。まるで宗教画の一場面のよう。
◆「画家、彫刻家アルベルト・ジャコメッティ、パリ」(1961年) 自分の製作した彫刻に挟まれたジャコメッティの姿が、まるでその彫刻と瓜二つなのが笑える。作品が作者の分身なのがよくわかる。
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また、ブレッソンは世界中を巡り、訪れた地に長期滞在し、自分をそこの空気に同化させることで、数々の素晴らしい写真を残した。インド、中国、バリ、インドネシア、ソヴィエト連邦、メキシコ、中東、そしてここ日本。
好奇心に勝る才能なし。今回、こうして大規模な展覧会でブレッソンの素晴らしい作品をたくさん見れたことを幸福に思う。
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司会者 : ちょとエンディング硬くない?
T : いえいえ、そんなことありませんよ。
司会者 : そうかな? いまいち締まんないみたいだけど。
T : 大丈夫、まかしといてよ。
司会者 : 本当? じゃあ後は頼んだよ・・・。俺、みのさんに呼ばれてるからさ。
T: ・・・・・・(汗)。では、最後にブレッソンとTAOの夢のコラボレーションでお別れしましょう! またいつか!
『ブレッソン meets TAO』(2007年)
T : ・・・・・・やっぱまずった?
カルティエ=ブレッソン、観たいな~~~!
でもTAOさん、せっかくいい写真撮ってたのに・・・
最後の、やっぱまずってますよ?(爆)
面白いからいいけど・・・・・(苦笑)
by (2007-08-14 13:43)
いやあ~、本人はけっこういい気分なんですけどねえ(笑)。
このコラボ写真の発想は実は偶然の産物でして、カメラのファインダーを覗いたら、ブレッソン、九段のお堀、TAOが同時に写っているので、こりゃ三色ジェラートみたいでいいや! と思って撮りました。
写真展はブレッソンのまさに全貌がわかるもので、行ったかいがありました。どこかで見る機会がありましたらぜひ!
by TAO (2007-08-14 22:05)
(爆)
そのジェラート、食あたり起こしたりしませんか?(笑)
カルティエ=ブレッソン、以前デパート内の小さな展覧会に行った覚えがあります。
でも写真の記憶があまりないので、もう一度見たいなぁと・・・(汗)
by (2007-08-14 23:12)
確かに、このジェラートは食あたりしそう。だいいち、アイスなのに何故か暑々なんだなあ(笑)。
そういえば、トルコ料理には "辛い" アイスもあったけ。
ブレッソンの写真は、よくよく見ると、なんでこんな瞬間にシャッターを切れるんだ? と、思わざるを得ない<一瞬>が確かに存在し、彼がそれを捉える" 何らかの力" を備えていることに驚かされrます。
それは理屈を超えた "何か" なんでしょうか?
by TAO (2007-08-15 20:57)
〝唐辛子アイス〟じゃなかったですか?
日本にも、〝山葵アイス〟なるものが存在しますよ。(別に暑くないけど;笑)
カルティエ=ブレッソンは、写真家の中でも〝美しい映像を撮る天才〟ではなく、
〝奇跡的な瞬間を収める天才〟タイプだったのだと思います。
そうでもしなきゃ、あの写真は・・・・・ねぇ?
by (2007-08-16 16:59)