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『インランド・エンパイア』by デヴィッド・リンチ [映画]

 分からない、判らない、解らない、と言われて久しい、デヴィッド・リンチ監督の最新作『インランド・エンパイア』を、恵比寿ガーデンシネマまで、わざわざ観に出掛けた。

   

 <わからないモノ好き>を自負するTAO故、リンチ監督作品はほとんどロードショーで観ているのだが、この『インランド・エンパイア』の前評判が、これまで以上に、わっからねーっ! との連呼に、ついいつもの悪い虫が脳味噌の中を這いずり回り、気が付いたら映画館のチケット売場の前に立っていた。鑑賞券も買わずに定価(大人1800円)で映画を観るなんて、いったいいつ以来だろう。
 さらに上映時間、3時間ジャスト! 場内飲食禁止の状態で、果たして瞼も閉じずに最後まで観続けられるのでありましょうか?

 ・・・・・・ふうっ、やっと観終わったぞ。
 眠りもしなかった。
 で、面白かったか? と問われると、あんまり~と、脱力感満載な返事をしてしまう自分がいた。

 ごくごく大雑把なストーリーは、まあ、ある。
 ローラ・ダーン扮する女優がある映画の主役に抜擢された。その映画とは、昔製作されたにもかかわらず、主役の男女が何物かに殺害された為に未完成に終わった曰く付きの作品のリメイクだという。撮影が始まり、女には旦那がいるにもかかわらず、競演するの男優の誘惑に負け、恋に落ちる。それは映画の脚本でのことなのか、それとも・・・。

 まあ、こんな感じの始まり。セットに出没する謎の人影あたりから、徐々に「映画」「現実」「幻想」が複雑に絡み合い、観客を深い霧の中に誘い込む。

 映画の冒頭に、ローラ・ダーンの近所に引っ越して来たので挨拶に伺ったという謎の老婆の言う、"今日は明日で、明日は今日で" の通り、以降の時間と位置がパラレルのように入れ替わり、それが結びつきつつ離れていく。
 こちらは最初からストリーを追う事を放棄してしまっているので、ふ~ん、そうなんだ、で? みたいな感じで目の前で展開する "絵" を眺めていた。言ってみれば、リンチ流のイメージフィルムの放流に身を任せていた訳だ。
ただ、それがこれまでに目にした事のないような斬新なイメージなら文句もないのだが、実情はこれこそ過去作品の "リメイク" もどきで、み~んなどこかで観たようなものばかり。結局は破綻した『ツインピークス第2シリーズ』みたいなもので、なんだかな~なのである。
 誰も言わないから言うけど、リンチも老いたなあ・・・。

 これを "リンチ美学" などとおっしゃる方がいたら、それこそ "美学のない人ね!" と笑われるだろう。
 他人の "センズリ" を眺めながら、一緒に "チンポコ" 摩ってやる趣味は、残念ながらボクにはありませんぜ! 旦那!!!

 そんな中で唯一楽しめたのが、娼婦たち。彼女らの豊かな肉体だけはリアリティに溢れていた。T-シャツの下から突き上げるような丸いふくらみや、黒い下着からはみ出しそうな乳房の前には、幻想がどうした、映画がどうしたなんて、この際どうでもいいやと思わせられる。溢れる存在感の一発芸! 楽勝ですな。
 リンチ本人もそれがよく分かっているようで、エンディングのタイトルロールに、歌って踊る女たちの生命力に満ちた身体の躍動感をもって終わる。な~んだ。最初っからこっちを描けばいいじゃないか! 次作は是非彼女たちを主役に、ミュージカルを作って欲しい。ねえ、リンチさん!

 ・ 
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 おまけ。
 『これであなたもデヴィッド・リンチ』編

 ①赤いカーテンと開かれる無数の扉
 ②じわじわ迫り来るノイズ
 ③おもわせぶりな映像(でも何もなし)
 ⑤意味のない台詞
 ⑥あってなきが如しのストーリー

 どうです、これであなたもデヴィッド・リンチ!!!


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コメント 10

みん姐

おはようございま~す。
リンチ監督作品は「ブルーベルベット」と「ロストハイウェイ」・・あとは「ツインピークス」は観てますが、TAOさんの「これであなたもデビット・リンチ」編には笑っちゃった~~!!
そうそう、なんかそんな感じですよ。③なんてツボ!
彼のお気に入り俳優、カイル・枕クランはもう出てないんですか?
彼とはゲイの関係だと確信してました。彼を使うと何となく物語が妖しげなムードを出すようでしたが・・・・・・彼は最近ゲイムービーに出ていたようです。(パッケージをチラッとみた)
ブルーベルベットのイザベラ・ロッサリー二のケバイ化粧の娼婦といい、リンチ監督のもつ女性の描き方ってこれまた好みが出ますね。
元気のいいグラマラスでエロっぽい女性。。
私はこういうの結構好きです~♪
by みん姐 (2007-10-28 09:07) 

TAO

『ロスト・ハイウエイ』まで観たという事は、みん姐さんもかなりのリンチ・ファンとお見受け致しました。あれもなんだったんだっけ? って映画だったような。
よく分からん映画では『メメント』が抜群に面白かったです。記憶が5分(?)しか持たないってやつ。ラストでは、なんだ、そうだったのか! と、納得させられました。
"元気のいいグラマラスでエロっぽい女性"......まさしく、たまりませ~ん!
ワタクシ事ですが、南米系の胸もお尻もボヨヨ~ン! とした女性に目がありません! 
いつもの酔っ払った時の論争⇒女は胸だ!、いや尻だ!
ええい、ほざくな、どっちもいい!!!(下品ですいません。でも好き!)
by TAO (2007-10-28 17:43) 

みん姐

おはようございます。
う~~~ん。。。リンチ監督作品が特に好きってわけではありませんが、数年前はちょっと気になる存在でしたね。。娘さんが撮った「ボクシングへレナ」も病的な映画でした。。
そうそう、「メメント」、観たじょ~~!(あ。。ここでも)
あの作りは斬新だった!しかも主演がお気に入りのガイ・ピアース☆
「L.Aコンフィデンシャル」と「プリシラ」のギャップに萌えました。
ところで、酔っ払った時の論争が。。おもしろ~~い!
男性って結構そういう論争するんですか?こだわりもあるんでしょうね。(笑)
南米系のグラマラスなボディの女性とか、イタリアのかつてのグラマラス女優って、セクシーというのは勿論、「大地」って感じの生命力に溢れてて女性から見ても圧倒される活力感じます。
ちなみにTAOさんは胸とお尻のどっち派でっか~~?(下品ですいません。でも好き!笑)
by みん姐 (2007-10-29 07:39) 

TAO

『プリシラ』も確かにいい! 特に往年の病的二枚目俳優のテレンス・スタンプ(パゾリーニ監督の『テオレマ』を観よ!)が!!! こ、こんなのありですかあ~(笑)
酔った時の漢(おとこ)の話は、エロ話に始まり、エロ話に終わる。これが正しき漢道というものぜよ!(←坂本竜馬の魂、憑依中)
で、「胸とお尻はどちらが好きか?」という質問に対しては、「娘と息子どちらが好き?」と尋ねられるのと同じで、甲乙つけられません! はっきり言って "両方"好きです。
それでも白黒つけろと銃口をこめかみに押し付けられたら、51対49で、お尻~!
ちなみに太腿も大好きです!!!
by TAO (2007-10-30 00:13) 

みん姐

いや~!!!笑った~~@@@@

>白黒つけろと銃口をこめかみに押し付けられたら、51対49で、お尻~!
ちなみに太腿も大好きです!!!

んもう・・・・TAOさんの表現力には参ったなあ~~(爆!)
そうですか。。酔った時の漢の話って、そうなんだ。。。にやり。
竜馬さん、勉強(?)になりました。
そうそう!テレンス・スタンプですが、「テオレマ」は未見です。
ぜひ某レンタルショップで手に入れますね♪
私は「コレクター」や「スーパーマン」の彼も良かったけど、何といってもポー小説のオムニバス「世にも怪奇な物語」の中の「悪魔の首飾り」がピカ一☆
フェリーニが彼の為に脚色して作ったとしか思えない程、退廃的で自虐的でアル中、ヤク中な俳優役!素晴らしくて何度観た事か。。
もし未見だったら100%オススメです!!!
by みん姐 (2007-10-30 07:44) 

みん姐

追伸:私のブログでもテレンスさんを取り上げさせてもらいました☆
よろしかったら下手な文ですが見てね。
by みん姐 (2007-10-30 09:07) 

ken

先週金曜日からハリウッドに来ていて、
リンチの家まで行く道が「マルホランド・ドライブ」だと知りました。
なんてことないワインディングロードなのですが、
ここからあの映画を作ったと思うと、やっぱりヘンなオッサンだなと
しみじみ思いましたw
by ken (2007-10-30 23:01) 

TAO

『世にも怪奇な物語』、当然観てますよー! あの独特な雰囲気がたまりませんでした。マイナー、アンダーグラウンド、淫靡なもの好きな性格は昔から変わりませんぜ! 大人になったら直る予定だったのですが、いまだにそのまんまです。
"変態が極めて気持ちの良い"ことを知ってしまったんですね。こりゃ、もー戻れねえ!
ですよね、姐さん♥♥♥
by TAO (2007-10-30 23:08) 

TAO

kenさん、
そうですか、リンチはマルホランド・ドライブ近辺に住んでるんですね。昔そのあたりを "他人の運転で" 走ったことがあります。そう言えばそのまんまのトイトルの青春映画があったように記憶しています。
今回は悪口を書いてしまいましたが、基本的にはリンチ好きなワタクシゆえ、内へ内へ沈み込んでいくのではなく、もっと外側に向かってPOPにはじけてもらいたいわけです。
例えばジョン・ウォーターズのように!
by TAO (2007-10-30 23:16) 

みん姐

おおお!!!J・ウォーターズ!!☆
あ・・・ごめんなさい・・つい反応しちまいました!
昨日はブログにコメント、ありがとうございました~感激!
ええと、私は以前ジョンのへんてこな本を借りて、あまりに不健康な生活を明るくポップに堂々と書いてる事に清々しさを覚えました。
「ピンクフラミンゴ」とかで使った迷(?)優のデバイン。。
彼のようなキャラにスポットを当てるジョンワールドって素敵です。
「クライベイビー」も好きですね~あの頃のジョニー・デップは可愛かったしチョィワルで良かったな♪脇役もクセモノ揃いで楽しいし♪
「世にも怪奇・・・」観てましたか?さすが!
あの少女の笑みには戦慄でしたよwwwwwwぶるっ!
by みん姐 (2007-10-31 09:12) 

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