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『雨のにおい』(東京タンバリン) [演劇]

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 観終わって、どことなく箱庭円舞曲を想い出してしまった。
 そういえば会社が舞台でOLが・・・という設定も久しぶりで、それも含めて箱庭以来かも。

 とある設計事務所のとある部署。
 今日も社員は忙しくあちこちを飛び回っていた。
 クライアントとの打ち合わせ、巨大テーマパークへのコンペ参加、建設中のビル等々。
 課長を中心にまとまっているはずの部署の人間関係は、しかし、微妙に軋み始めていた。
 一方、同時に描かれるのは、鉄道会社の遺失物管理センターに新たに着任してきた男性と、何故か中国人に成り済ます女性とのやり取り。多種多様な落とし主相手に、怒りを通り越して苦笑させられることばかり。

 舞台は左右対称に洒落た三日月型のテーブルが配置され、それに合わせて客席もステージの両サイドに設けられている。

 2つの物語は平行して語られるのだが、最後の方になって一つに合体する。
 異なった時間軸を行き来して、それが重なった時、物語の全体像が明らかになり、いったい何が起きたのかが観客に提示される凝った仕組みとなっている。
 そういえば上演中何度か現在から過去へ、ちょうどフィルムの逆回しよろしく、登場人物があわただしく後ろ向きにバタバタと素早い動きで戻る仕草をする場面があり、コミカルな動きがポイントポイントでアクセントとなっている。
 
 設計会社の仲間たちは忙しいながらも和気藹々(わきあいあい)と仕事をこなしているように見える。だが、内情は誰かがいない時はその人間を揶揄(やゆ)して笑う有様だ。悪意はないのだが、みんなが自分のことばかり考えていて、身勝手なのだ。
 その中の一人が受け持った現場のガイジン労働者とトラブルになり、彼女と上手くいかなくなった腹いせに同僚の女子社員にセクハラをしたことから、かろうじてバランスが取れていた人間関係に亀裂が生じてしまう。やがてそれは課長をも巻き込んでの事件へと発展してしまう・・・。

 全編を通して観ると物語りは至ってシンプルなのだが、あちこちに工夫が凝らされていて、それがラストになって物語りに深い余韻をもたらすことに成功しているのはさすがだ。
 
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