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『これは本ではない』(うらわ美術館) [アート]

 さて、ランチ&ビールを終え、次の目的地、浦和美術館へ向かう。

 浦和には先に訪れた埼玉近代美術館と、このうらわ美術館の2館が、隣同士の駅に存在するという稀な地域なのだった。
 昼ビールでちょっぴり酔いながら、地図を手に歩く。途中、交差点に立っていた警官に道を尋ねる。

 ビルの3階にあるうらわ美術館それほど大きくはないけれど、シンプルな作りだった。
 ここで開催されているのが、『これは本ではない』と名付けられた、ちょっぴり風変わりな展覧会。
 ↓ こんなチラシ。


   002_512.jpg

 ユニークなのは、<本ではない>とありながら、ブックカバーには<本である>と、ぬけぬけと書かれているところ。ふん、ふん、こりゃあ、天邪鬼根性を刺激するぜ!

 入館料を払って会場に入る前に、展示スペースがあり、ちょこっと覗いてみると、床一面に何やら置かれている。顔を近づけてよーく見ると、草花や昆虫たちだった。針金で作ったスタンドに張られている。きっと森を模しているのだろう。まさに足の踏み場もないとはこのことだ。
 フムフム、、、と、感心していると、美術館員の方が、
 「天井にもあるんですよ」
 と、教えてくれた。
 見上げると、あれまあ、、、天井一面に、こちらは蝶が張り付けられていた。
 これらは百科事典等に描かれたものを、ひとつひとつ切り取ってたものなのだ。まさに気の遠くなる作業。
 「まるでドミノ倒しのドミノみたいですね」
 などと、しばし雑談する。
 美術館で美術館員と雑談するなんて、多分、初めてに違いない。
 
 展示室に入ると、一般的な《本》という概念からはいささか外れた作品群が待ち構えていた。
 レンガに新聞紙を転写したものが、重ねて並べられていたり、陶器で出来た本や、鉄で出来た本、さらには、水に浮かぶ本、沈む本、、、。
 たかだか《本》とはいえ、作家たちの考え出す《本》は、まさに千差万別。

 電子書籍よろしく、本の形をしたモニターに、次々に流れる言葉が、実は聖書に書かれているそれだったり、焼かれて黒焦げになった本が、まるでキャンプファイヤーよろしく、積み上げられていたり、『2001年宇宙の旅』のモノリスよろしく、黒い巨大な円柱がそびえ立ち、その周囲をゴミ屑となった本が取り囲んでいたりと、迫力ある大作もあった。
 そして、入口横の展示スペースで見た切り取られた無数の蝶が、展示室の壁全面を用いたガラスケースに!!!
 まさに圧巻!!!

 電子書籍というメディアが話題になっている昨今、昔から面々と続く《本》という物の概念を今一度問い直すこの展覧会は、《時代と美術は並行して走る》を具現化した、まさに旬な企画と言えるだろう。


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