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『リピート』(乾くるみ) [書評]

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                     『リピート/乾くるみ』(文春文庫)


 『イニシエーション・ラブ』でブレイク(?)した乾くるみの次作がこの『リピート』。
 文庫版裏表紙の『リプレイ』 + 『そして誰もいなくなった』との説明は言い得て妙で、これだけでミステリーファンには、なるほど・・・と、うなずくこと間違いなし。つかみとしては分かりやすくて良いですね。

 STORY:風間という謎の人物から任意に選ばれた9人の人物がいる。年齢も職業もバラバラだが、彼の予言が2度に渡って現実を言い当てたことで、彼の主張する<時間をさかのぼって戻ることが可能である>という話を信じざるを得なくなる。ただし、やり直せるのは10ヶ月前までらしい。
 ある者は失敗した大学受験をやり直そうとし、ある者はあらかじめ記憶しておいた万馬券で金を稼ごうとする。全員が明確なビジョンを持っているわけではなかったものの、たとえ10ヶ月間だけとはいえ、やり直せるという事実に心動かされない者などいるはずもない。
 リピートは成功。さてこれからそのメリットを生かして・・・という時に、一人、また一人と、リピーターたちは命を落とし始める・・・。

 巻末の読み応えのある解説にもあるように、ネタもととなったであろう『リプレイ』(傑作なので未読の方はぜひ!)の多大な影響下にありながら、それだけではない独自のストーリー展開に、興味は尽きない。500ページもあるのに読みやすいため、一気に読み進めるのも嬉しい。
 SFの設定でスタートし、その後は推理物となる物語は、なぜリピーターたちが殺されるのかの解答を一つの山場として、人生をやり直すことが幸せに直結しない理不尽さも感じながら、最後の結末へと雪崩れ込む。苦いエンディングもここでは必然なのかもしれない。

 傑作『イニシエーション・ラブ』を読んだ後では、多少物足りなく感じてしまうことも事実だが、これはこれで平均点以上の出来ではあると思う。なので旅行のお共に持参すれば、気楽に読めることは保証します。


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