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さよなら!僕らのソニー [書評]

 何やら感傷的なタイトルですが、そう付けざるを得ない作者の思い入れがたっぷり注入された著書。
 別に悪口を言いたいわけじゃない。じゃないけれど、言わずにおれない胸の内、察してくだせえ、皆の衆、、、とな。

 <ソニー神話>なる言葉が意味を持っていた、80年代。ウォークマンはまさに革新的だった。音楽を外に持ち出せるなんて、誰が想像しただろう? 家で聴いて、外でも聴いて、場所が変われば同じ音楽でもまったく別に思えた。
 そしてプレイステーション、パソコンのVAIOへと、ソニーが生み出す機器は、単なる物を超えて、わくわくした楽しさを与えてくれたものだ。

 それに比べて今のソニーの低迷はいかんともし難く、特にハワード・ストリンガー氏が全権を握るようになってからは、ソニーの存在理念であった、「誰も考えたことのないものを作る」という部分をバッサリ切り捨て、ハードではなく、ソフト(ソニー・ピクチャーズ)に力を注ぐようになった。
 それはそれで時代の趨勢(すうせい)であろうし、けして悪ではないが、それをもって他部門の減少した売り上げをカバー出来るに至っていないのが実情だ。
 数日前に東芝の元社員が、技術を転職先の海外企業に渡した罪で逮捕されの事件は、単にいち企業の問題ではなく、犯罪という極端なことにはならなくとも、日本から技術者がいなくなっているという、技術大国日本の凋落を象徴する事件だった。
 ソニーにおいても、状況は変わりなく、これまで製品開発に携わっていた技術者が、ソニーを辞めざるを得ない立場に追いやられた苦い現実が物語っている。
 会社が、新製品の開発に不可欠な技術者を辞めさせたということは、新製品はいらないと宣言したに等しい。製薬会社を例に取れば、うちはジェネリックしか作らないから、開発しなくていい、と、言っているのと同じことなのだ。

 実はボクも、約1年前にソニー製のブルーレイレコーダーを購入し、初日から録画に失敗し、修理に出した経験がある。結果は初期不良。技術のソニーに憧れがあった世代としては、どういうこと??? と、その思いが一気に崩壊したのだった。

 テレビ事業の分社化、VAIOの売却、コンピューター事業からの撤退、保有する土地の売却、と、たまに新聞紙面を飾ったかと思えば、負の話題ばかり。これでは著者でなくとも、ソニーよ、どこへ行く? と、問い詰めたくもなる。

 社内の権力闘争やハワード・ストリンガーCEO&会長の問題等は、ぜひ本文をご覧いただきたい。
 世界規模の大会社となったが故の苦悩もありありと書き記しつつ、それでもやっぱり、「さよなら!僕らのソニー」と言うに至った胸の内が、哀しい。

 

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