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『トーマの心臓』(萩尾望都) [書評]

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                    『トーマの心臓/萩尾望都』(小学館文庫)


 せっかく『半神』~『11人いる!』と続けて読んだので、ここは青汁じゃあないけれど、もう一杯! といこうじゃないの。
 そこで萩尾望都の代表作中の代表作の『トーマの心臓』を手に取ってみた。
 たぶん、男には理解不可能なこの独特な世界観に振り回されるのか、嫌悪感を抱くのか、はたまたハマるのか、ちょっぴり自分が怖い気がしております。

 舞台は寄宿学校、、、って、すでに設定から怪しい雰囲気が漂って来ます。しかし、古くは『小さな恋のメロディ』等のイギリス映画では割と良くある設定でもあるので、まあ、そんなには驚きません。
 寄宿学校という閉じられた世界では、勉強も遊びも生活もすべてがそこの中で繰り広げられます。なので必然的にそこが世界のすべて。
 それがたとえ外の世界から見て歪(いびつ)であったとしても、世界がそこにしか存在しない以上、特異な状況もまた当り前となります。例えるなら、5秒以内の反則ならOKと最初からルールに盛り込まれているプロレスのように。

 寄宿学校、それも男子校なのだから、恋愛もまたそこのルールに則って行われます。
 現実の男子校とは違い、フィクションの中の全寮制男子校では、色恋沙汰もまた男同士が当り前。それも超イケメン集団なのだから、あれやこれや、実に色々あるのでした。

 タイトルにもあるトーマという少年はなぜ死んだのか? 彼は学級委員長のユーリを深く愛していて、<死>はそれを証明するための行動だったのか?
 ユーリの身体に付けられた<傷跡>はなぜ付いたのか? 誰からも愛されたユーリが周囲に対していつも距離を置き、孤独の中に身を置くのはなぜか?
 死んだトーマと瓜二つのユーリックは、トーマのなぞった人生を知らず知らずのうちに繰り返すのか? それともユーリックはユーリック本人として、ユーリと対峙するのか?
 ユーリを愛しつつ、どんな時でも彼を優しく見守るオスカーの思いは果たして届くのか?
 それらの疑問がジグソー・パズルのピースのように、物語の中の所定の位置に置かれた時、『トーマの心臓』の全体像が浮かび上がってくる。
 ~愛情、憎しみ、嫉妬、博愛、犠牲、友情~
 それらをすべて内包した物語世界は、やはり一つの大宇宙なのだろう。

 余談だが、個人的にはユーリの一番の理解者である大人びたオスカーがいい。
 先に記した『小さな恋のメロディ』での、マーク・レスター演じる主人公の悪友、ジャック・ワイルドを彷彿させるキャラがとても魅力的だ。
 
 
タグ:コミック
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