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「甲賀忍法帖」(山田風太郎) [書評]

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 いつも何かしらの本は読んでいるのだが、おっくうでぜんぜん書き記していなかった。
 別に誰かが困るわけでもないから、いいっていえば、いいんだけれど。

 山田風太郎といえば、親戚の家の古びたトイレに、文庫本が置いてあったような記憶がある。
 まだボクが子どもの頃の話なので、もうかなり昔のことだけれど、今はなき母方のおじいちゃんが割と本好きで、特に時代ものが多かった。あと、小説×××とかの四六版サイズのエロ話も載っているやつ。
 トイレ(昔ながらに便所と呼んだ方がしっくりくるが)にそんな本が置いてあると、子どもながら、ドキドキして読んだ(見た?)ものだ。

 山田風太郎は、ご存じの如く、戦後日本を代表する大作家の一人であり、推理小説はもとより、歴史小説、特に忍者を主人公にした伝奇小説、エンターテインメント&エロな娯楽作品を数多く発表した鬼才。

 「甲賀忍法帖」は1958年に書かれた、その後に続く忍法もののはしり。
 時代は慶長十九年。七十三歳になる家康が、跡取りを竹千代にするか、国千代にするかに悩んだ末、甲賀と伊賀の精鋭忍者各十人を代理として戦わせ、勝った方を跡取りとするというもの。
 実在の人物を登場させながら、忍者たちは架空の存在で、それも奇想天外な忍術を駆使して、相手を抹殺しようとする。

 とにかく、それぞれの忍者固有の忍術が突拍子もなく、唾が超強力な接着剤のようになって飛んだり、ひとにらみすると、相手を自在に操れたり、手足のない芋虫のようだったり、切られても切られても再生する忍者だったりと、こちらの想像を大きく上回り、あっ! と、驚かせてくれる。
 計二十人の忍者の中には当然女の忍者もいて、それがまたエロさ満開なのだ。肉体的に興奮すると、息に毒が混じり、相手を殺してしまうとか、まったくよくもまあ、こんなに次から次へと考えつくものだと、半ば呆れてしまう。

 それでもエンターテインメントとしてとても良く出来ているので、どんどんと読み進んでしまうのだ。
 甲賀、伊賀の忍者たちが次々と死んでゆく中、詩情溢れるラストなど、やはり感動してしまう。
 いやはや、まったくもって、侮りがたしの一冊だ。


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