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『シュガーマン 奇跡に愛された男』 [映画]

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 音楽好きなら興味深い一本だと思う。

 RODRIGUEZ(ロドリゲス)の名で、1970年、アルバム「COLD FACT」を引っ提げて、アメリカデビュー。
 しかし、まったく売れず。日雇い労働をしながらも、翌年、セカンドアルバム「COMING FROM REALITY」を発表、同じく売れず。以降、音楽シーンより姿を消す。
 しかし、彼の「SUGERMAN」が、海を隔てた南アフリカで大ヒット。すでに消息不明となっていたこともあり、ステージ上で焼身自殺説、同じくピストル自殺説がまことしやかに囁かれる。
 それから数十年。RODRIGUEZの消息を調べようと、南アでCDショップを営む男が、無謀とも言える調査を開始した・・・。

 ボブ・ディランと比較されるような、シニカルな詩は、より社会性を帯び、本人がメキシコ系のアメリカ移民であることも影響して、穏やかな語り口とは裏腹に、厳しい主張となっている。同時代に活躍したメキシコ系歌手にホセ・フェリシアーノがいるが、盲目&ギター演奏(日本では長谷川きよし)、憂いを帯びたラブ・ソングを武器にヒットを飛ばしたが、政治的シニカルさを武器にするRODRIGUEZには、それは叶わぬ夢だった。ちなみに「SUGARMAN」は麻薬の売人の隠語。

 死んだとばかり思われていたRODRIGUEZが、実はアメリカのデトロイトで生きていたことが判明。
 今でも彼は肉体労働者として、つらく厳しい仕事に従事していたのだ。そんなところに南アからの、突然の連絡に驚くRODRIGUEZ。あなたは南アでは超スーパースターなんだ、、、と。
 
 このドキュメンタリー映画の後半は、南アを訪れたRODRIGUEZが、巨大なホールでコンサートを行う場面が紹介される。溢れる観客、歓声、拍手、みんな夢の中の出来事のようだった・・・・・。

 ワタクシも音楽にはそれ相応の知識を持っていると自負する者だが、RODRIGUEZの名前は知らなかった。もちろん「SUGARMAN」という曲も。
 映画の中流れる彼の曲に耳を傾けると、穏やかで優しいメロディは耳になじみやすく、いいなあ~と思うものの、歌詞は、当時のアメリカ人にとっては、正直、聴きたくない類のもののような気がする。同傾向では、カントリー・ジョー・マクドナルドという、ヒッピー文化の影響大な歌手がいて受けていたにもかかわらず、RODRIGUEZが、メキシコ系、いわゆるマイノリティであるという事実が、そんなやつの批判なんか聴きたくねえよ! という白人層の物言わぬ雰囲気は、きっとあったに違いない。

 ドキュメンタリーでありながら、押しつけがましいところがなく、音楽が好きだ! 知りたいから撮ったんだ! と、その心もちがはっきりした、垢落としのようなドキュメンタリー作品として、万人に紹介したい作品。
 彼の2枚のアルバムは、サントラ同様、今では簡単に手に入れられるので、純粋に音楽として楽しむことも可。
 正直、アルバムを通して聴くと、傑作だとは思わないけれど、無視される類のものではないと思う。こちらもぜひ一聴を。


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